大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

浦和地方裁判所 昭和56年(ワ)1189号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

再抗弁1の事実<編注・時効中断>について判断するに、<証拠>を総合すれば、原告が相殺をした都度訴外会社に連絡を入れており、被告がそのことを知つていて何ら異議を述べなかつたとする点を除いて、これを認めることができる。その余の事実については、これを認めるに足りる証拠がない。

ところで、利息ないし元本債務の一部の弁済は、元本債務全体についての民法一四七条三号の承認となり得るが、債権者が一方的にその債権の一部につき相手方の債権と対当額において相殺する旨の意志表示をなす一部相殺の場合は、これに対し債務者が何ら異議を述べなかつたとしても、債務者側に何らかの積極的な態度が示されていない限り、同条三号の承認に該当しないものというべきである。

従つて、原告が被告に対する意思表示なくして相殺により差引計算に附することができるとする特約に基づいて、右相殺をなした本件においては、本来の民法五〇五条の相殺の場合に比して、さらに債務者である被告側に何ら積極的な態度がみとめられない場合であるといえるから、民法一四七条三号の承認にあたらず、時効の中断事由となり得ないことが明らかである。

よつて、再抗弁1は理由がない。

(高山晨)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!